自然農の野菜づくり

類書「自然農・栽培の手引き」と同様、川口由一さんによって監修されています。どちらの書籍も自然に沿った栽培法を説明していますが、多少異なる部分もあります。

私は自然農を行う際、両方の書籍を参考にしたのでどちらもお勧めです。基本は「自然農・栽培の手引き」を読み、その後で「自然農の野菜づくり」(本書)を読んで比較検討しながらどのように野菜を栽培するか決めました。内容的にうまく補い合っていると私は感じます。

それぞれの書籍で特徴的な部分を抜粋:

「自然農の野菜づくり」(本書)

1.野菜の栽培法に限定している
2.畑の準備の内容説明が詳しい
3.自然農で必ず直面する雑草への対処が詳しい
4.収穫した野菜を加工・保存する内容が詳しい

「自然農・栽培の手引き」(類書)

1.全体的にイラストが多くて作業の視覚化がしやすい
2.野菜だけでなく、米や果樹の栽培方法も記述してある

本書を開いて初めの方には、著者高橋さんによる自然農の風景が写真に収められています。

人によっては雑草ぼうぼうの畑にしか見えないかもしれません。しかし、そこには自然に沿った農業の哲学が見えてきます。人間中心ではなく、自然中心に効率化された農とも言えると思います。

写真を見るとわかるように、自然農の欠点は植えた種が芽を出してもなかなか雑草と判別が付かないことです。少なくとも私はそうです。

生き物を敵としないので、害虫や害獣と呼ばれる虫や動物も極力傷つけず、柵で畑を囲ったりすることで対処されています。自然農法関連の書物を読むと、理想的な空想世界を思い描くことが私は多いですが、本書は現実の自然農の大変さもちゃんと伝えようとしている所が好感持てます。

ちなみに本書の序を読んで気づいたのですが「自然農法」と「自然農」は若干違うみたいです。前者は福岡正信さんにより提唱され、後者は川口由一さんによって名づけられたとのことです。私が実際参考にしている自然に沿った農は、川口さんの「自然農」です。

それでは章別の感想を書いていきます。

第1章:生命の営みをつなぐ自然農の要諦

畑の準備の所では畝立てなど一から具体的に説明してあり、私は非常に参考になりました。

畑に合う作物の選択には、そこに生えている雑草で判断するという考え方になるほどと思いました。自然農で畑作業を行う際は、長年放置されて草が生え放題の耕作放棄地の方が、以前畑だった所よりも始めやすい場合があるようです。それに自然農の利点の一つとして、連作障害が出にくいという事もあります。

野菜を切らさない作付けの工夫が書いてあるのも、生業として自然農を始める方には参考になるはずです。私は人様から借りている畑ですから、基本的に冬は栽培しませんけど。

種の撒き方はイラストと写真の両方が挿入されているので、わかりやすいと思います。

自然農を行う上での大きな問題は雑草の対処です。類書ではあまり扱っていなかった内容なので、私は助かりました。

動物による食害の項目を読むと、やはりある程度はハンター(狩猟者)が必要な気がします。獣が人の生活圏に傍若無人に頻繁に入り込むのであれば、それ相応の対策は必要でしょう。著者もわな狩猟免許を取って、捕獲した動物は食べるとの事です。

せめて自然の中に限定して、弓矢などの原始的な武器の使用くらいは社会的に認められても良いと思います。本能で生きている動物たちには自分より立場が上か下かの判断基準しかありませんから、人間が舐められて下に見られないことがお互いのためにも重要だと思います。

章の最後の方で、自然農でどうやって生計を立てているかの説明は、農業を考えていらっしゃる方には参考になると思います。

第2章:自然農の野菜・つくり方のポイント

ここでは、実際にそれぞれの野菜をどうやって栽培するかの説明が書かれています。この本でしか書かれていない内容もあるので非常に参考になることも多いのですが、やはり最初の方でも述べたように私は野菜の栽培の基本は類書「自然農・栽培の手引き」を参考にし、補足として本書を活用する形を私は取ります。

育て方を詳しく説明している野菜もたくさんありますが、中には1、2ページほどしか説明がない野菜も多いのでちょっと想像力が必要になったりします。文字主体なことも、想像力の必要性に拍車がかかっていると感じました。

第3章:自然農の野菜などの加工・保存の工夫

昔ながらの梅干し、干し柿、柿酢、たくあん漬けの作り方や、梅ジャム、ドライトマト、ザワークラウトなど近代的な加工食品の作り方も書かれています。

まとめ:

全体的に非常に読みやすいのですが、野菜の種類によってはもう少し詳しく説明して欲しかった部分も多かったです。

参考までに:

「自然農・栽培の手引き」と本書「自然農の野菜づくり」でどちらか一方だけを購入するなら、私はまず「自然農・栽培の手引き」を手に取ります。別に本書が内容的に劣っているという意味ではなく、単に前者の方が広い内容を扱っているため自然農の全体像が把握しやすいからです。全体像を把握した後で、野菜栽培に関してより詳しく知りたいときに本書が役立つと思います。畑づくりを一から行う方法が知りたい際は、本書の方が詳しいです。

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