自立のためにプロが教える株式投資

本書はタイトル通り、投資で自立を目指す方の為に書かれた本です。プロの水準の高さとアマチュアの甘さをいろいろな角度から説明しています。技術を身につけることの重要さや情報の扱い方など、プロの相場師になるための基本的な練習を一から丁寧に説明している本書は、文句なくお勧めできる一冊だと思います。

著者の板垣さんは物事をはっきりと話すタイプの方です。人によってはその物言いがきつく感じられるかもしれません。その場合はまず、立花義正著の「あなたも株のプロになれる」を読まれることをお勧めします。

理由は立花さんの書籍の方がやさしい言い回しが多いので、読みやすいと思うからです。もう一つの理由は本書の最後の方で、立花さんの取引記録を元にして著者が自分なりの投資手法を説明するので、まずはその元となる書籍を最初に読んだ方が内容を理解しやすいと思ったからです。

要は値動きの「波動」がみえてくるように変動感覚を磨き、その波動に沿って有利に建て玉を建てたり処理するための相場の技術が必要だということだと思います。

本書は5パートに分かれています。それぞれの感想を書いていきます。

第1部:ノルマ

まずは著者の大学時代からお話が始まり、投資の理論や現実に関して著者なりの考えを説明します。そして、証券会社に就職して少し経つと現実の厳しさに直面して初めての挫折を経験します。

ここで証券会社の内情などを話されているのですが、本書で書かれている証券会社に関する情報などは、20年以上も前の話ですので現在の状況はかなり変わっていると思います。

今でも個人の投資家を食い物にするような会社はあるのかもしれませんが、証券会社同士でも生存競争が激しく行われている以上、個人投資家に損しかさせないような会社はすぐネットなどで噂になり淘汰される可能性が高いと思います。ですから本書での証券会社に関するお話は、参考程度に受け止めれば良いのではと考えます。

板垣さんも林さんや立花さん同様、技術習得の重要性を強調し、理論を軽視している所は同じです。私個人はこの考えに完全に同意できないことを、「あなたも株のプロになれる」で説明しました。

第2部:市場分析と銘柄

タイトルでもわかるように、ここでは市場分析のための情報収集やその分析について語られています。

分析は大きく分けて下記の3つに分けられます。
1.経済全般データ
2.会社(銘柄)データ
3.値動きデータ

経済や会社(銘柄)のデータも少しは考慮しているという点で、純粋な相場技術者たる立花さんとは多少方向性が異なるかもしれません。ちなみに私は、3の値動きデータだけを重視して取引をしていました。本パートに書かれている経済や銘柄に関するデータを集めたり分析することを私は行ったことがありません。

たくさんの情報を収集して総合的に投資の判断をするか、それとも立花さんのように値動きだけを見て投資をするのかは、ご自身で読んでみて判断していただければと思います。

第3部:情報

このパートでは情報の扱い方についてさらに突っ込んで話しています。先ほども話しましたが、私は外部情報は一切気にせずに投資をしていたので、内容に関しての具体的なコメントはしませんが、為になることがたくさん書かれていると思います。

第4部:勉強

最初にお料理学校などを例にとってプロやアマチュアの違いを一つずつ比較して、プロの程度の高さとアマチュアの程度の低さを明確にしていきます。

プロとアマチュアの違いはまず心構えです。プロの料理家になる人は最初に皿の洗い方や包丁の基本的な扱い方から学ぶかもしれませんが、アマチュア相手のお料理学校ではおしゃれなお菓子とか、最近流行のスープの作り方などを教えます。プロは基本の技術を時間をかけながら学びますが、アマチュアは応用の技術をいきなり短時間で学ぼうとします。

多くの人はめんどくさくてつまらない基本の勉強をお金を払ってまで学びたいとは思いません。教えられる側の生徒がすぐに結果を求めるのであれば、教える方も生徒の要望に応えてあげる必要があるので、ある意味仕方のない面もあるかと思います。

つまり、難しい見栄えの良い料理の作り方を学びたくて数千円払える人はたくさんいても、大根の桂剥きの練習だけで数千円払える人はほとんどいないということです。料理を知っていても自分ではその料理を作れない人が多いのは、投資を知っていても自分では投資で稼げない人が多いことと本質は一緒だと板垣さんはおっしゃっています。

私もこれには同意します。要は基礎の勉強を疎かにしてはいけないということです。

次に著者と相場の師匠との出会いの話に移ります。いろんな思いをしながら師匠から学んでいく過程が語られています。その様子を読んでいくと、私は独学が性に合っていると再認識させられました。

159ページの「知的作業と能力的作業」の項目で語られている内容(アナログ感覚やデジタル感覚など)は、よくノートに写して復習しました。本書はいろんな内容(著者の経験談、考え、練習方法、まとめなど)が散らばって書かれている印象が強いので、重要だと思った部分はその都度書き写して、後で自分で内容をまとめた方が理解しやすいかもしれません。

第5部:売買

ここでやっと建て玉の建て方を実際に図で見れることになります。平均値の考え方もここで知りました。場帖やグラフの付け方に関しても、本書を参考にしている部分があります。

パートの後半では立花義正さんの実際の売買取引を見ながら、林さんご自身の投資手法を解説されています。一つの売買取引記録を異なった手法の投資のプロの方が解説しているので、いろんな視点から考えることができ非常に参考になりました。

それと、238ページの「基本を身につける方法」以降の内容は、立花さんの「あなたも株のプロになれる」にも書かれていない投資の基本練習の仕方を一から丁寧に説明されています。この通りに勉強を始めれば間違いはないと思います。私の投資手法、例えば場帖や玉帖は元より、大きな1ミリ方眼紙を利用した月足グラフ、日足グラフの書き方なども本書に書かれていることを基本にしています。

まとめ:

本書は、投資で自立を目指す方の為に本音で率直に書いてあります。証券会社の内部事情のお話などは、現在状況が変わっているかもしれませんが、それを差し引いてもプロやアマの違いを明確にし、技術習得の重要性を解き、プロの投資家の観点から世に溢れる情報に対する見方を教え、最後にプロになるための初めの一歩を踏み出すための練習方法を丁寧に解説されています。

私は気になりませんでしたが、著者の板垣さんは物事をはっきりおっしゃる傾向が強いために読者を選ぶかもしれません。しかし、内容は非常に濃いと思いますので、興味のある方は手に取ってみてください。

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