間違いだらけの疲労の常識 だから、あなたは疲れている!
疲労は大なり小なり多くの人が悩んでいることだと思います。著者によると、特に日本は疲労大国だそうで、タイトル「間違いだらけの疲労の常識 だから、あなたは疲れている!」にも書かれている通り、我々一般人は疲労に対して大きな勘違いをしていたということを気づかせてくれます。
疲労を感じることは体が休息するように警告を出してくれているわけですから、必ずしも悪いこととは限りません。疲労感という体からの警告を無視し続けて行動を続ければ、最悪過労死などの結果につながる場合もあります。
疲労には生理的疲労と病的疲労があります。生理的疲労は短期、中期、長期とあり、長期疲労になる程疲れがたまっていきます。病的疲労は慢性疲労症候群などの病気が原因の疲労となります。本書は、生理的疲労に関しての対処法を述べた本となります。
本書を手に取った動機
私は20代の頃から疲れやすい体質にずっと悩んできました。よく仕事場の上司に若いくせに体力がないと馬鹿にされたものです。自分は疲れやすい体質だと言っても、なかなか周囲には理解してもらえません。根性が足りないとか怠け者と思われてしまうので、結構つらかったことを覚えています。私の場合は首の部分に疲労が集中することが多いです。こうなると頭脳労働は一切できなくなります。
普段から私が感じている疲労がどういうものか知りたかったので、今回読んでみることにしました。
疲労が起きる原理
疲れの大元の原因は活性酸素です。体を動かしたり頭を使ったりするためには、エネルギーが必要になります。そのエネルギーを作り出す過程で必ず活性酸素が発生します。
活性酸素は人体にとって必ずしも悪い働きだけをするわけではありませんが、細胞を酸化させて錆びさせてしまうという困った作用を持っています。細胞が錆びるとその老廃物から疲労因子FFという物質が誘導されます。このFFが疲労を起こしてしまう物質だと近年わかってきたそうです。
つまり、疲労した体とは疲労因子FFが体内にたくさん増えた状態のことを言います。
疲労度を測定する方法
疲労度を測定するには、先ほども話したように血液中にある疲労因子FFが測定できれば、その人がどれだけ疲れているか客観的に知ることができます。しかし、疲労を測定するために一々血液検査をしていたのでは大変です。
そこで体内に生息するウイルスによって疲労度を計測する方法が開発されています。そのウイルスはヒトヘルペスウイルスと呼ばれていて、宿主である人間が疲れたり体調不良になると、体外に逃げ出そうと唾液に集まってくる習性があります。この特性を利用して、唾液中のヒトヘルペスウイルスの量からその人の疲労度を計測できるということです。
疲労感なき疲労
一方で、ろくに休息を取っていなくても疲れを感じさせずに働き続けている人も世の中にはいますが、そのような人も要注意だと本書は警笛を鳴らしています。たまたまその人が疲労回復因子FRが多く発生する体質で疲労回復能力が元から高い場合もあるでしょうが、「疲労感なき疲労」を引き起こしている可能性も考えられます。オーストラリアで働いていた当時の上司は、多分この「疲労感なき疲労」を起こしていたように思います。彼は健康に問題を抱えているのに、3時間しか寝ていない日もありました。過度なストレスで疲労感がマスクされていたのでしょう。
なぜ体が疲労しているのに頭では疲労感を感じないのかというと、それは人間には欲があるからだそうです。意欲や欲望が疲労感を隠してしまう為、体が限界にきているのにそのまま働き続けてしまいます。
ちなみに、人間以外の動物などは本能に支配されているので、どんな状況でも体の声に忠実に従って行動するのだそうです。動物は疲れれば、お腹が減っていても獲物を取るのを諦めで休息をとります。自然の動物は一旦病気になったらお医者さんにもかかれませんから、素直に本能に従って必要な時に休息を取ることで酸化した細胞を回復し、健康を維持することが生き残るために一番大事なことなのかもしれません。
生命を削ってても成し遂げたい大事なことがあるのであれば個人的に否定はしませんが、周りの人間まで同じ土俵に巻き込まないでもらいたいと思います。例えば、同僚全員が一日10時間以上働いているのに、自分だけ8時間働いて定刻に帰宅することはできません。日本人の真面目で頑張り過ぎな国民性が社会全体に影を落としている側面があると思います。
よろずが疲れやすい原因
本書を読んで私がなぜ疲れやすいのか、いくつかの原因に絞り込むことができました。
1.神経質な性格のために、交感神経が常に優位になりっぱなしで自律神経に大きな負担をかけている可能性。
2.疲労回復因子FRの量が一般人より少ないため、細胞の修復能力が低く、結果的に疲労回復が遅い。
3.不規則な生活で自律神経のバランスが崩れている
4.慢性疲労症候群という病気の可能性。
自分でできる疲労対策としては、とにかく睡眠時間を充分に取るということが一番のようです。私の場合は、次の日に疲れを持ちこさないためには一日当たり10時間くらいの睡眠が必要となります。日本人の平均睡眠時間は7時間ちょっとだそうですが、私がもしそのような睡眠時間で毎日を過ごしたとしたら、間違いなく長生きはできないでしょう。
ちなみに、慢性疲労症候群という病気は比較的最近に発見された新しい病気らしく、治療法が現在確立されていません。病的疲労が原因ではないことを願うばかりです。
疲れを明日に残さない生き方は多くの社会問題を解決する
もし日本人全員が十分な休息を取って疲れを次の日に持ち越さないような生活を送ったとしたら、世の中に存在する多くの問題が一気に解決するような気がします。
疲労は細胞が傷ついている証拠ですから、放っておけば癌などの重い病気にかかる可能性が高くなります。そのため、余分な医療費が発生することになります。身体的なトラブルだけではなく、疲労は精神的な問題も引き起こします。私は20代の頃はいつも疲れを感じていましたが、そのような時ほどひどく精神的に病んでいたような気がします。疲れは生きる気力すら奪ってしまうものです。疲労に対する十分な理解が国民全体に必要だと思います。
ちなみに「飽きる」ということは疲労の最初のサインだそうで、私が飽きやすいのは今まで性格の問題だと思っていましたが、実は自律神経や体が疲れやすいことと関係しているのかもしれません。飽きやすい性格だからと無理やり一つのことに集中し続けると、脳や自律神経の細胞がダメージを受け続けて、最終的には疲労回復因子FRでも修復不可能になることもあるそうです。
食べ物での疲労回復について
コーヒーやスタミナ食を食べても疲労回復効果がないことは、多くの人が経験的に知っているかもしれません。コーヒーなどに含まれるカフェインは疲労感を緩和しますが、疲労そのものを回復する効果はありません。スタミナ食については、現代人は十分すぎるほどのエネルギーを取っているので、エネルギー不足が原因の疲労は少ないそうです。
抗酸化作用があり疲労回復効果が実証された今後脚光を浴びるかもしれない成分として、イミダペプチドがあります。この成分が多く含まれた食品には、例えば鶏の胸肉や魚のカツオがあります。黒酢やレモンに含まれるクエン酸も疲労回復に効果があります。しかし、私は酢を毎日飲んでいますが、正直疲れにくくなったというはっきりとした実感はありません。一方風邪が引きにくくなったので、多少免疫力が向上したようには感じます。その他にも抗疲労効果のある成分として、良質のたんぱく質やアントシアニンなどがあります。本書の最後の方では、これらの抗酸化作用がある食品を使ったレシピが掲載されています。参考にすると良いでしょう。
疲労を発見したり疲労回復を促す成分が問題の根本解決に繋がるか?
私が本書を読んで疑問に感じたことが一つあります。それは、疲れをヒトヘルペスウィルスを使って早期に発見する技術や、イミダペプチドを投与することで疲労回復を促す技術が、日本人が抱える疲れの根本的問題を解決できるとは思えないからです。
この疲労を効率的に回復する技術が世の中に広まることによって、将来の日本人は労働時間が増えるかもしれないと考えます。生活が楽になることは多分ないでしょう。競争社会とは本来そういうものです。過去に電気が発明されたおかげで多くの恩恵を我々は受けていますが、一方で現代人は深夜まで働くことが当たり前になりました。車や飛行機の発明は移動時間を大幅に短縮させましたが、早く移動できる分新たな仕事が増えました。
昔の人が1時間かけてこなした仕事が、現代人は10分で済むかもしれません。しかし、短時間で仕事が終わるから残りの50分は遊べるようになったわけではありません。節約できた時間は新たに生じた仕事によって埋められます。
まとめ:
疲労は別に敵ではありません。疲労を感じることは体が警告を発してくれているという考え方が重要だと思います。疲れを回復したいなら、まず行うべきは十分な睡眠を取ることです。私も経験上、睡眠が非常に大事であることに同意します。食品で疲労回復効果を期待する場合は、イミダペプチドの豊富な鶏肉やカツオ、アントシアニンの豊富なブルーベリーなどを組み合わせてバランスよく食べると良いらしいです。
責任感や欲のために疲労を無視して働き続けると、過労死などの原因になったりします。そして、その無理な行動は当人だけではなく、周囲の人たちにも迷惑をかける可能性があります。
疲労をうまくコントロールすることが個人の健康にも健全な社会のためにも重要なことだと思いました。
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