おいしい水のつくり方

人は水なしでは生きていけません。私たちが普段飲んでいる水道水がどうやってできているのか理解することは、非常に大事なことだと思います。一方、なぜ多くの人が水道水の代わりに高いお金を出してまで、ミネラルウォーターを購入して飲むようになってしまったのでしょうか?

欧米と異なり、水が豊富な日本でミネラルウォーターを購入する必然性はあるのでしょうか?山の湧水を取水してペットボトルに詰め込んで売っているものがミネラルウォーターだとすれば、同じような原理で水を人工的につくれば、ミネラルウォーターに近い品質の水道水ができるかもしれません。

それが「緩速ろ過処理」であり、別名「生物浄化法」ということです。つまり、「生物浄化法」とは河川に湧く清水がどのようにできるのかを知り、生物の働きを理解することで、安全で安い飲み水を大量に生産できる方法のことです。

著者は「緩速ろ過処理」という名前が誤解を生むから「生物浄化法」と呼ぶべきと主張されています。例えば「緩速ろ過」の代わりに「ゆっくりろ過」でもいいんじゃないですかね。マスコットキャラは「ゆっくり」に定評のあるこの人(↓)にお願いすれば、若い人を中心に大ブレイクすると思います。

ゆっくり霊夢

冗談はさておいて、生物浄化法にとって重要な要素は次の事柄です。
1.藻(酸素を供給)
2.砂の大きさ
3.均一な砂面と下方へのゆっくりとした一定の流れ
4.微生物

私には自然を利用したこの水の浄化法は、理にかなっているように見えます。本書は非常に素晴らしいことがたくさん書かれていると思うのですが、不満に感じる部分もいくつかありました。

飲み水のつくり方を学ぶ動機:

飲み水の確保は食料の確保と並んで非常に大事なことだと、震災時に思い知らされました。水道水が確保できないような状況や場所で生活する時に、どうやって飲み水を得れば良いのか考えていた時に、本書に出会いました。

幸運なことに、震災時には私が住んでいる場所は水道水には困らなかったので、その点は良かったと思います。

インフラのない場所で飲み水を手に入れるには、一つは雨水を利用することが考えられます。これは実際に小さな離島などではよく行われている方法だと聞きます。しかし、雨が降らなければ当然水は手に入りませんから、非常に不安定な水源と言えます。

そこで、本書に書かれている「生物浄化法(緩速ろ過処理)」で人工的に安定しておいしい飲み水をつくる方法が参考になると思いました。

ミネラルウォーターを購入するのが当たり前になった理由:

私個人がミネラルウォーターを頻繁に買うようになったきっかけは、オーストラリアでお世辞にもおいしいとは言えない水道水が原因だったと思います。何せ飲むと変な味がしたり下痢をしたりするので、お店で売っているミネラルウォーターを買わざるを得ませんでした。

オーストラリアに住んでいた頃の習慣が今も続いていますから、帰国してからも日本で水道水を飲み水として飲んだことがありません。今回のレビューを機に、子供の頃のように水道水が当たり前だった生活スタイルに戻せるか試してみたいと思います。

冷静に考えてみると、ミネラルウォーターをお店で購入すると、ガソリンと同等かそれ以上のお金を支払っていることになります。水が豊富なはずの日本でおかしなものです。

ちなみに震災時は、配給されていた水道水を必ず過熱してから料理や飲み水として使用していました。水を入れるタンクも綺麗だとは言えませんでしたし、水洗トイレが使えない時に下痢などの腹痛になることは絶対避けたかったからです。

本書の構成について:

本の構成に関しては、正直に言って読みづらいと感じます。内容が良い分残念です。

全部で92項目に分かれて書かれているのですが、一つ一つのトピックの相互の関連性がよくわからないことがあります。何かブログの内容をそのまま本にした感じです。

それに、本書は日本語だけでなく英語でも内容を併記しています。世界中の人が理解できるようにしたかったのだと思いますが、実際に読んでみるとわかりますが、違う言語が混在していると読みづらく感じます。それに、英語で書かれている分のページ数も無駄に感じます。日本語版と英語版で分けて出版された方が良かったのではないかと思います。英語の勉強をされている方には、ちょうど良いかもしれませんけど。

他に、欲を言えば、個人で手軽にできる生物浄化法のやり方を一つ一つ基本から丁寧に説明して欲しかったです。一応本書の最後の方「自分たちで生物浄化装置を工夫しよう」の辺りで説明されていますが、内容が不十分に感じます。必要な材料のリストや注意すべきことなど、ステップに沿った説明があれば、最高だったと思います。

まとめ:

以上で、河川に湧く清水の原理を利用しておいしい水をつくる本書のレビューを終わります。知識を得る目的だけでしたら、本書の内容には満足しています。時間に余裕があれば、私自身で「生物浄化法」を実践できるか試しても良いのですけど、正直に言って多分失敗するような気がします。失敗する確率を極力減らすために、もう少し詳しい内容を系統だって知りたかったです。

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