自給養鶏 Q&A

長年鶏を飼い続けてきた中島正さんが、その中で投げかけられた様々な疑問とそれらの答えを一つにまとめたのが本書となります。

内容を考えると、主に本格的に就農に興味のある方にお勧めです。初版が2009年と比較的近年に書かれた本ですから、情報の鮮度も新しく参考になる部分は多いと思います。

まえがきでも述べられていますが、できるだけ前著「自然卵養鶏法」や「農家が教える自給農業のはじめ方」との内容の重複を避けたとのことです。幾分突っ込んだ内容が多いと感じます。

本書は前著「自然卵養鶏」と「農家が教える自給農業のはじめ方」を読んだ方が、さらに養鶏について知りたい場合に購入すると良いと感じました。もちろんペット用として数羽飼われるだけの方にも有用な情報が書いてあります。私個人は、現状生業としての養鶏を考えていませんので、上記の2冊で十分と感じました。ご自身にとって必要かどうかは下記の感想を参考にしてください。

これから本格的に養鶏を始められる方は、まず第6章から読んでいくと良いでしょう。

第1章:エサについて

質問で一番多いのがエサについてらしいです。確かにエサは卵の品質にも大きく影響してくるので、養鶏を行っている方から見れば気にするのは当然だと思います。

発酵飼料の作り方に関しては、前著の2冊より本書が詳しいと感じました。それほど質問が多かったのだと思います。腐葉土のうまく活用するのがポイントみたいです。

「草養鶏」という養鶏法の説明は非常に興味深く読ませていただきました。これならば、将来食料不足に陥ってもなんとか養鶏をやっていけるかもしれません。今でこそ当たり前にとうもろこしを鶏のエサとして与えていますが、食料不足に陥れば家畜に分け与えるだけの余裕はないでしょうし。

まとめると発酵飼料の重要性をこの章で繰り返して述べられています。私は手間を考えて行っていませんが、いずれまとまったニワトリを飼育したり、農作業を行う時でも発酵を積極的に利用したいです。

第2章:育すうについて

自然卵養鶏を行う方にとって、丈夫で健康なヒナを育てることは絶対の条件です。そのノウハウが細かく説明されています。私は数羽しか飼わないですし、雛も中雛から導入したのでここは読み飛ばしました。

第3章:飼育環境について

ここでは、前著と内容が若干被るところが多いですが、すでに読んだ方も重要なことですので、復習のつもりで読むと良いと思います。

第4章:病気対策について

ここも、前著と内容が被る部分が多いです。要は病気を叩くのではなく、病気に罹らなくするために鶏が本来持っている自然の抗病力を高めてやる飼育形態を実践するということです。薬は当然使いません。

この章を読んでちょっとびっくりしたのは、現在も薬漬け養鶏は続いているという事です。私はてっきり問題が騒がれなくなって久しいので、今は世間に配慮して抗菌剤や抗生物質はほとんど鶏に投与されていないと思っていたのですが、現状は違っているようです。日本に限った問題ではありませんが、非常に根が深い問題だと読んで感じます。

自然卵養鶏法でも防げない病気はあります。卵墜症、鶏痘(ジフテリー)、肝臓肥大症、回虫、尻つつきの5つです。

昔、うちのヒナが鶏痘(ジフテリー)に罹ってなくなりました。目が冒されたので、「目ケ」というらしいです。体が元々弱かったので、いくら食べても全然成長せず、結局免疫力が低下して発症したのだと思います。見ていて非常につらかったです。

そういえばうちの鶏は尻つつきはしませんが、稀に食卵する鶏が出てくるのが気になります。

第5章:経営について

この章では卵価の設定、卵販売のテクニック、代金回収のことなど営業に関わることを説明してあります。経営が軌道に乗っても決して経営拡大をするなと言っています。足るを知ることは重要だと思います。

卵の品質について等級別の比較図がありますが、うちの卵の等級をこれで見てみると、多分一級に近いといった所でしょうか。緑餌は十分与えていると思うので、やはり発酵飼料を全く与えていないのと、鶏舎の外で十分な運動をさせていないのが卵の味や品質に影響しているのだと思います。まあ別に人様に売るわけじゃないですし、ニワトリが元気に産んでくれればそれで満足です。うちの卵は淡泊な味ですが、濃厚な味ばかりがおいしさの定義じゃないでしょう。

ニワトリの卵をたくさん生産できたら、本書に書かれている卵油というものを作ってみたいです。市場ではなかなか売っていませんし、一度食べてみたいです。

87ページのシステム養鶏法の項目で、仕事のやりがいを取り戻すのが自然卵養鶏とおっしゃっています。養鶏に限りませんが、私も仕事にやりがいを感じるということは非常に大事なことだと思います。やりがいは人によって感じ方が異なりますから、それを政治家や経営者などが万人に押し付けることはできません。

第6章:心構えについて

後、養鶏を行う上での注意として、家を長期間空けられなくなるということです。生き物を扱っているから当然のことですが、案外見落としている人が多い気がします。私はこれが理由で、養鶏を生業としてはできないと考えています。別によろずが旅行好きだからだというわけではなく、体を壊した時にどうするのかということを考慮してのことです。

自給目的の規模であれば、いざという時は近所の方にお願いしてもいいかなと考えますが、これが商売で一日100個単位で集卵するとなると、人に頼む場合も勝手が違ってくると思います。

まとめ:

以上です。就農を考えている人には、発酵飼料やヒナの育成など細かい内容まで書かれているので、お勧めします。しかし、初めて養鶏の本を購入するのであれば、前著を先に購入された方が良いと思います。ペットとして鶏を飼うなら、無理に購入する必要はないかもしれません。

本書の値段を考えると、もう少し内容にボリュームがあっても良かったと思いました。

おわり

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