機密施設に導入されたロシアの最新スパイ防止装置、それはタイプライター

たまたまロシア関連で興味深いニュースがありました。それはロシアの機密施設から重要な情報が漏れないように、スパイ防止対策としてタイプライターを導入したということです。

なぜ今更タイプライターなのかというと、現代のスパイ技術は非常に高度になっているらしく、PCなどの電子機器での文書作成などはデータが一瞬で盗まれたりするなどのリスクが伴うことになります。そこでアナログのタイプライターを使用すれば、簡単には情報が盗まれなくなるというわけです。

このニュースを見た時、ロシアとアメリカの宇宙技術開発の考え方の違いについての逸話を思い出しました。


アメリカはボールペンを新たに開発し、ロシアは鉛筆を使用した。

アメリカのNASAが宇宙に進出した時に、普通のボールペンでは紙に書けないことに気付きました。それで科学者たちはこの問題を解決するために多額の費用をかけて無重力の宇宙でも書けるボールペンを開発しました。

その一方でロシアは鉛筆を使って紙に書いていた。


というお話です。

アメリカだけでなく日本もそうだと感じますが、何か問題を発見するとそれを解決するために新たな最新技術を開発する方向にのめり込む傾向があると思います。何ていうか最初から視野を狭めて深く難しく考えるような癖とでも言いましょうか。

一方ロシアは現存する技術を活用してアナログな方法で問題解決の方法を思いついて実行する辺り、発想の仕方が異なると感じられます。

注意:このお話はかなり脚色されています。実際はこちらのNASAのサイトにも書かれているように、ロシアもNASA同様にペンを購入して使っているようです。

古い技術や知識の価値

よろずがこのお話を取り上げた理由は、古い技術や考え方も大事にした方が良いと思ったからです。

世の中は新しい情報や技術を喜ぶ傾向にありますが、それらは大抵すぐに陳腐化しますし、時の試練を受けていませんから何か問題を抱えている可能性があります。

銀河英雄伝説アニメの銀河英雄伝説を見たことがある人ならわかると思いますが、技術が発達した遠い未来のお話なのに戦い方が随分古典的だったりします。例えば艦隊戦にしても敵が目の前に来るまで気づかなくて奇襲を受けたり、白兵戦は銃撃戦もありますが斧(トマホーク)で殴り合うこともあります。

右の写真のように戦艦がビームで撃ち合っているのを見ると未来的な戦争に見えますが、やっていることは兵士が弓矢を撃ち合っている昔の戦争と本質は変わりません。

原始的な戦いを行う理由は、レーダーや通信がECM(Electronic Counter Measure)、つまりジャミングなどによって妨害されてしまいますから、相手の情報や味方同士のコミュニケーションが出来なくなるからです。当然ECMの高度化に対抗するためにECCM(Electronic Counter Counter Measure)、要するにジャミングを無効化するような技術も同時に高度化していきます。

そうやってジャミングの技術が追い越し追い越されしつつ発展していくと、いずれはこのアニメのように技術に頼った小細工を使用せずに、原始的な方法で直接戦った方が一番確実な時代が来るかもしれません。作家の方がどこまで考えてお話を作ったのかはわかりませんが、私が好きなアニメより感じたことを書いてみました。

現代戦だって状況は変わらない

現代戦だって同様に技術を過信し過ぎると足元を掬われる可能性が高いと思います。現に電子機器を無効化するような強力な電磁波を発生させる爆弾やそれらを広範囲に発生させる手法はすでにあります。

確か日本の自衛隊の装備には、強力な電磁波に対するシールドがなされていないとどこかで読んだ記憶があります。

日本はとかく技術信仰が強いですから、最新技術の戦闘機、ミサイル、AIPを搭載した潜水艦、イージスシステムを搭載した護衛艦などを優先して揃えてきました。最新鋭の戦術兵器が重要なことに変わりはありませんが、それらを揃えれば少数精鋭でもなんとかなると思っている節が国民全体に感じられます。多分核ミサイルのような戦略兵器を使用された場合の想定やシミュレーションは、日本では原発の安全神話みたいにタブーとして最初から考えないようにしているんだと思います。アメリカを含んだ核保有国であれば、戦術兵器だけでなく戦略兵器を使用された時の想定は当然行っていることです。

机上のシミュレーションであれば、確かに日本は単独で戦ってもアメリカ以外の国に対してそうそう負けることはないでしょう。しかし、それはあくまで条件を限定した場合に過ぎません。実戦であれば当然相手は敵の弱点を付いてきます。武装的な弱点、政治的な弱点、社会構造的な弱点、経済的な弱点、資源的な弱点、国民性としての弱点など、日本は弱点だらけです。相手も条件は一緒だと思われるかもしれませんが、日本は民主主義国家であることを忘れてはいけません。相手が独裁国家であれば自国の民衆を犠牲にしてでも勝とうとしてくるでしょう。当然彼らは自国の民衆の怒りをすべて日本のせいにしてくるはずです。やることが目に見えています。

それらの情報戦に対して日本の政治家がどこまで対応できる能力があるのか、現状の体たらくを見ていると心配になります。いつの間にか日本が悪者にされているケースも十分考えられますし。

わざわざ真正面から敵が武士道精神よろしく艦隊決戦を挑んでくるという思い込みや、核は使えない兵器という思い込みは危険です。

つい最近、アメリカの大陸間弾道ミサイル(ICBM)迎撃実験が失敗したというニュースが流れました。あくまでICBMですからアメリカをターゲットにしたものとして、日本ではあまり話題にもなっていませんが、このニュースは日本の国防戦略にも今後影響が出てくる可能性があると思っています。アメリカが敵国の撃ったICBMを撃ち落せないとなれば、国際上のパワーバランスが揺れ動くわけですから、アメリカに事実上守られている日本も間接的に影響を受けることになります。

普段日本人が気にしているのは、隣国の短距離弾道ミサイル(SRBM)や中距離弾道ミサイル(IRBM)ですが、それらだけをイージス艦などから撃つSM-3で撃ち落せれば万事解決という単純なものではないということです。

高度に電子化された日本社会で、武器も電子化されているとすれば、敵は当然のごとく相手のアキレス腱を集中的に攻めます。命のやり取りを行うような弱肉強食の戦いにおいて卑怯もくそもありません。私は大嫌いですが「騙される方が悪い」という考え方は弱肉強食の理の中では正当化されると思います。

一部の政治家ですら日本の自衛隊の戦力だけを考えて日本は戦えば強いなんて気軽に言っているんですから、その程度の状況認識では今後の行く末が多少心配になります。私は今の所自衛隊の戦力を急激に強化する必要はないと思っています。鎧を磨いたり刀を研ぐ前にまず自分のアキレス腱を強化する方がよっぽど大事だと思いますから。

おわり