シタン先生の社会講義-ゼノギアスより
今回は、よろずにとって一番思い出深いゲーム、ゼノギアスを取り上げます。欠点もありますが、ストーリーの壮大さにおいて、このゲームの右に出るものはないと思います。小学校の頃から数多くのゲームをプレイしてきましたが、このゼノギアスは私にとって1,2位を争うお気に入りです。
ただし、ここではゲームの感想を書くのではなく、物語に登場する主人公の仲間、シタン先生の印象深かった発言に関してだけ取り上げたいと思います。彼は物知りですし、戦っても強いですし、人格者でもあるので多くの人から支持されている人気キャラです。
シタン先生の社会講義
ある時、非常に頼りになる仲間だったシタン先生が物語の中盤で仲間を裏切り、主人公フェイを拘束することになります。
拘束後に彼は、フェイの理想や今までの彼の努力を真っ向から否定して、精神的に追い詰めていきます。
(一応シタン先生は、理由があって裏切ったり精神的に追い詰めたりしているんですが、詳細は省きます。)
結局、彼は2重スパイみたいなもので、主人公たちを裏切ったわけじゃないと後でわかるんですが、その非情な言動から一部のファンの間では「鬼畜メガネ」という愛称で呼ばれることもあったりなかったりします。
それでは、シタン先生が主人公フェイに話した内容をまとめます。
シタン:心配には及びません。彼らには彼らの……あなたにはあなたの役割がある。
フェイ:畜生……こんな……俺はなんの為にいままで……
シタン:戦ってきたのか……ですか?それは先ほど、法院の老人達が言ったとおりです……
フェイ:ふざけるな!俺達は奴等の為に生きているんじゃない!その為にこのソラリスまで来たんじゃない!みんな、自分のほんとうの居場所を作るために……そのために戦ってきたのに……。なのに……
シタン:居場所なんてものは、自らが作り出すよりも、誰かに与えられる方が楽なんですよ。そんなことも解らないんですか?
フェイ:そんなものは本当の……!
シタン:青臭い理想論など現実の前では意味をなしません。事実、多くの人はそれを満足としているではないですか。
与えられた居場所ならば、自分はそのリスクを背負わなくていい。たとえうまくいかなくても、その責任を転嫁出来るんです。
人が何故個々人ではなく、集団、国家といったより大きなものに依存するのか解りますか?人には寄る辺が必要なんですよ。自分が自分自身である為のね……それが強固であればある程よしとされる。
ガゼルの法院は、その寄る辺を与えてくれるのです。絶対的な管理者の下でならば、人は個人を保とうとするリスクを背負う必要はない。自分は“一個の人間だ”という幻想だけ持って生きていける。なんと楽なことじゃないですか。
事実は事実。受け入れましょう。その方が気が楽です。抵抗したところで虚しいだけです。辛いだけです。
フェイ:俺は……俺は……
シタン:それともまだ何かしようというんですか?あなたのその姿を見てごらんなさい……。この期におよんでどうするというんです?
身動きを取ることすらままならない。共に戦い、あなたを必要としてくれていた友も守れない。
フェイ:止めろ!止めてくれっ!
シタン:あたなにはどうすることも出来ないんだ。
以上です。
ゲームをプレイした当時は意味がわかりませんでしたが、今だったら言わんとすることがよくわかります。
でも、シタン先生の言っていることは正しいですけど、それを主人公が受け入れちゃったら、そこで物語が終わってしまいますね。
説明している本人自身、自分の言っていることを必ずしも正しいとは思っていないはずです。主人公に現実を教え、そしてその現実と向き合うチャンスを与えたんだと思います。
考察:
今の日本(というか世界全体)はIT化と共に、より効率的な管理社会に段々と移行しつつあります。個人の情報を一括管理できた方が、合理性を考えれば自然の流れなんだと思います。本ゲーム上では、個人の情報を収集したり管理する手法として、「メモリーキューブシステム」が出てきます。現実でも似たような情報管理システムがすでに存在するかもしれませんが、仮に今は存在しなくても近い将来生まれる可能性は大きいと思います。ゼノギアスの世界でも、一般人は自分の情報が収集されて管理されていると知らずに普通に暮らしていましたし。
未来を描いた仮想物語の多くは、自由があっても混沌とした世界か、絶対の秩序が支配する自由のない管理社会のどちらかの設定が多いですが、本ゲーム、ゼノギアスでもそのような集団や国家が出てきます。どっちの未来も楽しくなさそうですから、現実には実現してほしくないですね。
国民全体が慎重に考えた上で、考えや信念に裏打ちされた秩序と自由のバランスが取れた世の中が来てほしいと願います。
おわり
追加:
そういえば、シタン先生の奥さんであるユイさん(右上)が、ゲーム終盤になるといなくなってしまうのが今でも気になります。娘のミドリ(右下)だけが一人でポツンといる所を見ると、亡くなったのかもしれませんが、ゲーム上ではまったく触れられていませんので違和感を感じます。