国際情勢の現状と対策
このページでは、最近の国際情勢についての現状と今後の対策をいくつか考えていこうと思います。元々、こちらのページ「なぜ学問をするのか?(社会的理由)」で自分が学ぶ理由を自己の内面以外で考えていた時に、いろいろ思いついた事があるので、それら「いろいろ」の部分を文章としてまとめることにしました。また、日本に限定した話題は「日本の現状と目指すべき道」に書いてあります。
今一番「ホット」な話題は中国の強硬な態度だと思いますので、そのことを中心にしつつ、アメリカや周辺国のことも書きます。
1.最近の中国の態度と思惑
正直、ここ数年の中国の強硬な態度は予想外でした。尖閣周辺の領土紛争が起きるとしても、10年以上の時間的余裕があると思っていたんで、ちょっと変化の推移が早すぎるなと感じています。
本来でしたら、中国は大人しくしていれば放っておいても今後超大国になっていくわけですから、十分な経済力や軍事力を備えてから領土の野心をむき出しにする方が都合が良いはずです。
老獪な中国の指導者層ならば、長期的で堅実な戦略を取ると思っていたので以外でした。大局的視野を持たない日本人相手であれば、時間さえかければ容易に事を成就できたと思います。
そのような戦略を取らずに、中国が事を性急に推し進めようとする理由は、多分彼らの国内問題でしょう。それしか考えられません。ついでに日本人が極端な平和思考から目覚める前に勝負をつけてしまいたいという思惑もあるかもしれませんが、それはおまけ的理由だと思います。
どうみても焦っているように見えますし、よっぽど国内問題が緊迫しているんでしょうね。そうであれば、日本が取れる手段はいろいろあるはずなんですが、受け身でしか対応できないことに歯がゆさを感じます。
彼らの国内問題に乗じて、軍事的挑発を行うような余裕がなくなるように、楔を打ち込めればいいんですが、対外工作を行う諜報機関は日本にないはずですし、人道に反するような手段は日本人の正義感に反します。
実際、中国サイドはあらゆる媒体を通してすでに情報戦や工作を開始していますし、一旦軍事衝突が起きたら、日本に全責任があるという国際世論をあらかじめ形成しておきたいのでしょう。
日本は軍事的には専守防衛でもまだ良いと思いますが、せめて情報戦・諜報戦に関しては攻撃専門の部隊があっても良いと思います。
1-1.中国人にあまり敵対心を持つべきではない
ただし、中国人に対してはあまり敵対心を持つべきではありません。相手を敵と認識して見下し続けると、いつの間にか自分自身が見下されるべき低俗な人間となってしまいます。同様に、敵に怒りや憎しみをぶつけ続けると、いつの間にか自分自身が恐ろしくて醜い怪物になります。
これは至極当然のことで、『天地万物一体』の考え、または『大円鏡智(円通)』の考えが理解できれば、納得していただけると思います。鏡のように円を描いて自分に返ってくる智とも言えますので、善に向かえば善の智になって跳ね返り、悪に向かえば悪の智になって跳ね返ってくるということです。
後、大戦中に日本軍が中国で行ったことは決して誉められるものではなかったことも知っておいた方が良いでしょう。特に高い地位にいる仕官が中国で好き勝手やっていたのは事実です。例えば、せっかく『石原莞爾』とその仲間達が満州に理想国家を現地人と共に建国しようとしましたが、日本軍の中にいる欲の皮の突っ張った人たちによって、足を引っ張られ理想は形骸化して地に堕ちてしまいました。非常に残念なことです。
その当時の中国には、まだ日本人が持っていた理想に対して理解を示してくれる現地人もたくさんいたみたいです。彼らの期待を裏切らずに事を進めていれば、現在のような反日の共産国家が生まれることもなかったかもしれません。ですから、我々が犯した負の過ちもちゃんと認め、受け入れるべきだと思います。
また、ネットを見ると現状の日中関係に楽観的な人がいますが、一旦武力衝突が起こると、怒りと憎しみの感情の連鎖で止まらなくなるでしょうから、相当の覚悟が必要となります。短期で勝負が決まるなどと絶対思ってはいけません。
『孫子』では長期戦になる戦(いくさ)は愚の骨頂だと言っていますが、まさしくその通りで、日本が取れる戦略は短期決戦以外にありえません。そもそも、精神・肉体・物資・経済などの面で、長期的な戦いを継続できる準備なんかできていないんですからしたくてもできません。
一方、中国は若干事情が異なります。もちろん日本同様、経済や物資の観点から言えば短期で勝負をつけたいという思いは同じのはずですが、共産体制の維持という観点から見ると、戦いは長引いた方があちらの権力者にとっては大きな利点があるように見えます。それは、中国の一般民衆が日本に対して怒りと憎しみを持ち続けている方が、中央の権力者にとっては都合が良いからです。
現在の中国には深刻な国内問題が山積していますので、中国国民も不満を抱いている人が多いはずですが、一旦衝突が起きればそれらの鬱憤をすべて日本憎しにすげ替えることができるわけで、日本にとっては中国国民全体を相手にするという非常にまずい事態になる可能性があります。そのような最悪の事態も考慮に入れた上で戦略を考える必要があると思います。
政治家の方々がどこまで予想しているのかはわかりませんが、うまく立ち回って欲しいものです。そうじゃないと、自衛隊の方々も我々国民も余計な苦労をすることになるでしょう。
最後に皆さんご存知の事とは思いますが、『孫子』と『大学或問』から国防の最も基本的な心構えについて引用します。
「故に用兵の法は、其の来たらざるを恃むこと無く、吾れの以て待つ有ることを恃らむなり。其の攻めざるを恃らむこと無く、吾が攻むべからざる所あるを恃むなり」
孫子「九変篇第八」より
意味:
そこで、戦争の原則としては、敵のやって来ないことを(あてにして)頼りとするのでなく、いつやって来てもよいような備えがこちらにあることを頼みとする。また敵の攻撃してこないことを(あてにして)頼りとするのでなく、攻撃できないような態勢がこちらにあることを頼みとする。
「文事あるものは武備あるといへり。文事は治国・平天下の政なり。武備は内堅固にして、外恐懼(恐れる)す、武威の備えなり。(中略)北狄(中国の蒙古族や満州族)中国を取りて、日本に来りし事度々なり。今、巳に中国を取れり。よも来たりはせじとおもふたのみは武備にあらず。今北狄来たりなば、彼と合戦までに及ばず、内虚にして人心散ずる事あらん」
熊沢蕃山『大学或問』より
つまり十分な備えと共に、相手から攻撃されない(できない)体制を整えておく必要があります。また、熊沢蕃山の『大学或問』には、「文武一道」の精神が大事であり、油断をせずにあまり他の事に気を取られるな、という事が書いてあります。
日本人はまだ精神面で十分な備えができているように見えません。それ故に弱点を見透かされ、現在集中的にそこを突かれているような気がします。
注釈:
通常は「文武一道」ではなく、「文武両道」と呼ぶべきだと思いますが、私は文と武で二つの道が分かれてあるのではなく、一つの道だと思っているので、前者の言い回しを使っています。
1-2.中国文化に敬意を払う
現実的な外交戦略としては、日本国民は中国国民に対しては一切の敵意を持っていないということを知らせる努力をすると共に、中国の歴史や文化に非常に敬意を払っているということを政治家や国民を通して示すことです。
それは形式的なものではなく真摯な敬意でなければなりません。私なんかは、中国の淵源な思想や文化には敬服しています。学べば学ぶほどそう感じます。日本人のアイデンティティの多くは、古代の中国に由来するものも多いんですから、それらの起源を認めて態度に示す事が肝要だと思います。
しかし、それは服従の態度では決してありませんので、相手に勘違いをさせてはいけません。中国では強い相手に敬意を示すことはあっても、弱い相手に対しては徹底的に見下すような傾向がありますから、日本人的な慎みや礼儀正しさは通用しません。
現在の中国や韓国の日本に対する見下した態度は、日本人自身に原因があると思います。彼らの文化や価値観を考慮せずに、ただ過去の戦争の過ちを反省して低姿勢でいればいいなどという安易な態度が現在の問題を深刻化させています。
いずれにしろ、決して日本をだしにして中国共産党の存在と正当性を中国国民に認めさせる事態にさせてはいけないと思います。それを許したら、日本は多分負けます。
漢民族の恐ろしさを知るためには、歴史を学ぶとわかりやすいでしょう。学校で習う教育的な知識ではなく、自らの意志でその歴史に刻まれた人々の生き様を心で感じる必要があります。例えば、中国には「神仙」という道家に連なる長寿思想の教えがありますが、これ一つ取っても漢民族の現世での生きる執念は、日本人の比ではないと思います。
「宋」を滅ぼしたモンゴル民族が、逆に漢民族に吸収されていつの間にか見る影もなくなった現実をよく認識しておく必要があります。もし中国人が本来の力を発揮したら、日本民族は多分敵わないかもしれません。国を滅ぼしたり滅ぼされたりと、潜ってきた修羅場が違います。
「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」とも言いますし、自分と共に相手のことも良く知る必要があります。安岡正篤著の『禅と陽明学(下)』という書物に「漢民族と日本民族」という章がありますが、そこに書かれていることが非常に参考になるでしょう。上巻には、禅や仏教について詳しく(詳しすぎ?)書かれています。そちらに興味がなければ下巻のみ読んでも問題ないと思います。
もし付け入る隙があるとしたら、現在中国国民は共産党の独裁政治に支配されている点だと思います。そこが権力者にとっての最大の弱点と言えるかも知れません。
2.アメリカの衰退
アメリカは今後衰退していくと思われます。当然アメリカに追随している日本も同じ運命を辿るでしょう。いつどのような形でそうなるかはわかりませんが、彼らが生み出したグローバルな資本主義構造は、発展・発散・加速(陽)のみで、収斂・統一・減速的考慮(陰)が含まれていないので、いずれ出口がなくなります。
自らが発する強烈な炎の発散場所がなくなれば、己自身を焼き尽くすか、それとも過剰な熱を外部に押し付けて他を焼き尽くすしかありません。
アメリカの衰退に巻き込まれないためには、日本が独自の道を模索して歩んでいくしかありません。その答えはどこの国を見てもまだはっきりと示されていません。道のない道を歩む勇気があるかどうかにかかっています。
3.周辺国の現状
次にそれ以外の周辺国の現状です。韓国とは本来仲良くできればそれに越したことはないと思いますが、結構問題を抱えていますから、彼らが日本と心から仲良くしようと思わない限り距離を置いた方が良いでしょう。今までの流れから中国に限らず韓国も、日本が目先の損得勘定で経済的繋がりを強めても意味がなく、根本問題は解決しないとわかったはずです。
ロシアとは北方領土問題がありますが、可能な限り早く決着を付けて友好関係を築いた方が良い気がします。大戦の終了間際に火事場泥棒的に領土を奪われた過去があるにしても、そのためにいつまでも4島返還にこだわり続けるのが正しいのかどうかという疑問が最近出てきました。急激に国際情勢が変化している中で、昨今の中国の脅威はロシアにとっても他人事ではありませんから、日本とも仲良くしたいはずです。
ただ、あちらにもメンツがあるでしょうから日本の要求を丸呑みはできません。地図を見ればわかりますが、ロシアが万が一中国に加担したら、日本は事実上半包囲される形になり、唯一の味方は遥か後方にいるアメリカしかいません。中国が日本を無視してアメリカやロシアとだけ話を着けようとする理由もここにあると思われます。仮に友好関係を築けたとしても、油断は絶対にできない相手に変わりはありませんが。
台湾に対しては、個人的にはもっと以前から仲良くしておくべきだったと思います。現在でも台湾国民で日本人に悪い印象を持っている人は少ないですが、政治問題になると中立的な立場を取る人が多いはずです。
なぜならば、一時台湾と中国の間で非常に緊迫していた時期があったんですが、間一髪の所をアメリカの空母が横切って仲裁したおかげで軍事衝突には至りませんでした。台湾出身の人が結構危なかったと言っていたのを覚えています。その当時、日本は隣国での非常事態にも関わらず、火の粉が降りかからないようにと見て見ぬ振りをしていました。台湾の人達が本当に困っている時にリスクを省みずに手を差し伸べる勇気があったならば、現在とは少し違った関係を築けたかもしれません。
東南アジアの国々には、今まで通り友好関係を続けていくように努力すれば良いと思います。私自身、オーストラリアでパプワニューギニア出身の人から、日本が第2次大戦で一緒に戦ってくれたことに感謝していると聞きました。今でも記念としてその当時の銃は現地に残っているそうです。過去の日本兵が中国などで悪いことをしていたのも事実ですが、それが全てではないことも一緒に知っておくべきでしょう。
以上となります。
4.まとめ
これからしばらくの間は、中国やその周辺国との関係を注視しておいた方が良さそうです。しかし一方で、あまり外の出来事に振り回されないようにもしたいものです。相手がどうだろうと、自分の心持ち一つで幸せにも不幸にもなります。
陽明学の祖である王陽明は、賊を討伐するために軍を率いている最中でさえ、鎧を身に付けながら平常通り門人に対して学問の講義を行っていたそうです。私もそれ位の人間になりたいものです。
おわり